書きたいことを少しづつ

一息に書くのは苦手でも、ゆっくりとならできるはず

学園もの(仮) 4

 

kakitaikoto-kaiteikitai.hatenadiary.com

 

 高校に向かうため最寄駅まで歩く。本来なら自転車に乗っていくところだが、今回はそうはいかない。対して母親は自転車に乗っているので、重たい荷物は任せることにした。自転車だと十分とかからない道を、二十分かけて歩いていく。革靴の履きなれない感触を確かめながら見慣れた街並みを歩いていく。どうしてだろうか。このありふれた風景をよく見ておきたかったのだ。いつもよりゆっくりとした足取りで進んでいく。

 しばらくすると駅に到着する。目的地までの切符を購入し、ホームで電車を待つ。数分と待たずして電車がやってきたので、そのまま乗り込んだ。車窓から見える光景は、まだ馴染みのあるものだ。親しみのある電車、車内の雰囲気を感じながら、十五分ほど揺られていると路線の終着駅に着く。ここから電車を乗り換えて、約一時間したところに目的となる駅がある。

 路線は無事に乗り換えることができた。もう見知った電車、風景はなくなっていた。電車は自分の気持ちなどお構いなしに、一直線に走っていく。車窓から見える景色は、都会的なビル群が徐々に減っていき、畑などが目立つようになっていった。それが気持ちをより沈めさせていく。

 目当ての駅は開発が進んでいて、活気に溢れていた。だが、ここから更にバスで三十分かかることを知っていた身としては、そんなものはどうでも良かった。

 バスに乗車すると、同じ制服を着た学生の姿があり、行先には間違いがないことがわかった。と、同時に間違っていて欲しかった気持ちもあった。直通の臨時バスのため、そんなことがないのはわかりきっていたとしてもだ。

 バスが動き出してすぐに有名なお城が目に映った。これには胸が高鳴ったが、そのあとの田舎道や山道を通っているころにはすっかりと冷めてしまっていた。

 山道を進んでいると、大きな二つの柱が顔を覗かせた。これから通う高校の門である。嫌だ嫌だと思っていた場所に、とうとう来てしまったのだ。

 バスは無情にも門をくぐり、坂道を登っていく。道の両脇には、新入生を歓迎するかのように桜が咲き誇っていた。人並みの感情があれば、見事な桜並木だ、とでも思ったことだろう。だが、今の自分にはそのように思えなかった。

 朝から雨が降りしきっていた。ここまでの道のりの全てが灰色に見えていたのもそのためだろうか。鬱々とした気持ちと空模様が相まって、桜でさえもこの気持ちを晴らすことなく、ただセピア色に色あせていた。

 悪天候の入学式がまもなく始まる。